無印良品のシンプルで洗練されたアロマディフューザー。「デザインが好きだから、中身のアロマも無印良品で揃えたい」と考えている方は多いはずです。
また、雑貨屋さんやドラッグストアで、500mlほどの大容量で売られている他社製の「アロマウォーター」を見て、ふとこう思ったことはありませんか?
「これ、無印のディフューザーに入れても大丈夫かな? 純正のオイルより安くて長持ちしそうだけど……」
結論から申し上げます。 現在、無印良品では「加湿器用アロマウォーター」は販売されていません。
また、医療職として働きながらアロマテラピー検定1級を持つ筆者の視点からお伝えすると、無印良品のディフューザーに他社製のアロマウォーターを使うことは、故障の原因になるだけでなく、カビや雑菌による衛生面のリスクもあるため絶対におすすめしません。
「えっ、水みたいなものなのにダメなの?」 「じゃあ、安く手軽に香りを楽しむ方法はないの?」
そう思った方も安心してください。この記事では、プロの視点から「なぜダメなのか」の明確な根拠と、無印アイテムを使った「安全な代用策」を余すことなくお伝えします。
- あなたが探しているのが「アロマウォーター」なのか「ミスト」なのか(商品の正体)
- 他社製を入れるとなぜ壊れる?「泡」と「振動板」の意外な関係
- 医療職が警告する、加湿器の「ピンクぬめり」と雑菌リスク
- 無印アイテムで賢く安く楽しむための、3つの具体的な代用テクニック
「知らずに使って、お気に入りのディフューザーを壊してしまった……」と後悔する前に、正しい知識と賢い楽しみ方を持ち帰ってください。
1. まず整理!あなたが探している「無印のアロマウォーター」はどれ?

「無印良品の売り場で、アロマウォーターのようなボトルを見た気がするんだけど……」
そう思っている方は、おそらく似たようなパッケージの別の商品と混同されています。
無印良品の香りアイテムはボトルデザインが統一されているため、プロでもパッと見ただけでは間違えそうになることがあります。
まずは、あなたが「欲しい」と思っている商品がどれなのか、以下の表で確認してみましょう。ここを間違えると、機械の故障に直結しますので要注意です。
【図解】香りアイテムの違いと無印での取り扱い
| 種類 | ① エッセンシャルオイル(精油) | ② ファブリックミスト(フレグランスミスト) | ③ アロマウォーター(加湿器用芳香剤) |
| 中身の正体 | 100% 天然の植物成分 (原液) | 水 + エタノール + 香料 (消臭成分など) | 水 + 界面活性剤 + 香料 (防腐剤など) |
| 無印での販売 | あり(主力商品) | あり | なし |
| 主な用途 | ディフューザーで拡散 アロマストーン | 衣類・ソファ・空間に スプレーする | 加湿器のタンクに 水と混ぜて入れる |
| 無印機器への使用 | ◎ 推奨(これ一択) | × 故障の原因 | × 故障の原因 |
※過去に一部限定商品として販売されていましたが、現在は取り扱いがありません。
パターンA:「お部屋や衣類にシュッと吹きかけたい」場合
あなたが探しているのが「スプレータイプ」の香りなら、それはアロマウォーターではなく「ファブリックミスト(商品名:フレグランスミストなど)」です。
- 特徴: すでにスプレーボトルに入っていて、すぐに使えます。
- 用途: 焼肉を食べた後のコートや、なかなか洗えないソファ、カーテンなどに吹きかけて消臭・香り付けをします。
- 注意点: 液体だからといって、絶対にディフューザーや加湿器のタンクに入れないでください。含まれている消臭成分やエタノールが、機械のプラスチックを溶かしたり、フィルターを目詰まりさせたりします。
パターンB:「加湿器やディフューザーに入れて使いたい」場合
Francfrancやニトリ、ドン・キホーテなどで見かける「1リットルくらいの大きなボトルに入った、水に混ぜる液体」を探している場合。
残念ながら、現在、無印良品にはこれに該当する商品は売っていません。
「えっ、無印にもディフューザーはあるのに、なんで専用の水が売ってないの?」と不思議に思うかもしれません。
その理由はシンプルです。無印良品のディフューザーは、すべて「水道水」+「純正エッセンシャルオイル(精油)」で使用するように設計されているからです。
※過去には「アロマウォーター」があった?
「いや、昔ブログで無印のアロマウォーターを見たことがある!」という方もいるかもしれません。
確かに数年前、「甘夏の花」などの芳香蒸留水(ハーブウォーター)が限定販売されていました。しかし、これは植物を蒸留した際に採れる希少な水であり、現在雑貨屋さんで売られている「加湿器用の合成アロマウォーター」とは別物です。現在は生産終了しています。
2. 【警告】他社製アロマウォーターを無印の機械に入れてはいけない理由

「見た目は水と同じだし、大丈夫ではないか?」 そう思われるかもしれませんが、プロの視点で見ると、無印良品が推奨する「水道水」と、市販の「アロマウォーター」は成分が大きく異なります。
無印良品のディフューザーに他社製アロマウォーターを入れると、「故障」と「衛生トラブル」の2つのリスクがあります。その理由を論理的に解説します。
理由①:成分に含まれる「泡」が振動を妨げるから
一つ目の理由は、機械の仕組みとの相性の問題です。
市販のアロマウォーターには、水と香料(油分)を混ぜ合わせるために「界面活性剤」が含まれています。これは洗剤などにも使われる、泡立ちを良くする成分です。
- 超音波振動は「泡」に弱い 無印良品のディフューザーは、超音波の振動で水をミスト化する仕組みです。しかし、タンク内で微細な「泡」が発生すると、その泡がクッションの役割をしてしまい、振動のエネルギーを吸収してしまいます。
- 振動板への過度な負荷 その結果、正常にミストが発生しなくなるだけでなく、心臓部である「振動板」に余計な負荷がかかります。 これを続けると、振動板が過熱して変形したり、突然動かなくなったりする(故障する)原因になります。
参考:アロマディフューザーのよくあるご質問 | 無印良品
理由②:雑菌やカビを部屋中に拡散してしまうから
二つ目は、私が医療職として最も懸念する「衛生面」の問題です。
- アロマウォーターは腐りやすい 水道水には消毒用の塩素が含まれていますが、アロマウォーターには香料や保湿成分などの「有機物」が含まれています。これらは雑菌やカビにとっての栄養分(エサ)となるため、水道水に比べて腐敗スピードが非常に速いのです。
- 汚れたミストを吸い込むリスク 無印良品のディフューザーは、水を加熱殺菌しません。もしタンク内でカビが増殖していれば、カビの胞子をミストに乗せて、部屋中に拡散させることになります。
参考:レジオネラ症 Q&A(Q5.加湿器からの感染防止について)| 厚生労働省
せっかくリラックスのためにアロマを使っているのに、カビを含んだ空気を吸い込むことになっては本末転倒です。
実は私自身、過去にヒヤリとした経験があります。
まだ知識が浅かった頃、タンクの水を捨てずに継ぎ足して使っていたら、数日でタンクの内側に「ピンク色のぬめり」が発生していたのです。
これは「ロドトルラ」という酵母菌(カビの一種)。
「自分は今まで、この菌を部屋に拡散させて吸い込んでいたのか…」
そう気づいた瞬間、血の気が引きました。
ただの水でも管理を怠るとこうなるのですから、栄養分たっぷりのアロマウォーターを入れた場合、さらに汚れやすくなることは想像に難くありません。
「無印の機械には、腐りにくい水道水と、抗菌作用のある精油を入れる」 これが、機械を長く使い、かつ清潔な空気を保つための鉄則です。
3. 【プロの助言】なぜ「純正オイル」がいいのか?香りの質の違い

「でも、アロマウォーターの方が安くて、匂いもはっきりしていいのでは?」 そう思う方もいるかもしれません。
確かにコストパフォーマンスは重要ですが、アロマテラピー検定1級を持つ私の感覚としては、「香りの質」そのものが決定的に違います。
故障のリスクを冒してまで他社製アロマウォーターを使うメリットは、実はそれほど大きくないと感じています。その理由を、プロの視点でお伝えします。
合成香料(アロマウォーター)の「平坦さ」
多くの安価なアロマウォーターは、石油由来の成分などを使って作られた「合成香料」がメインです。
これらを嗅いだ時、私はよく「香りが単一で軽い」と感じます。 トップノートからラストノートまで変化がなく、ずっと同じ強い匂いが続くため、鼻の奥が麻痺してくるような感覚です。
例えるなら、「植物の香りというより、トイレの芳香剤や柔軟剤のパッケージが頭に浮かぶような匂い」です。 一瞬「いい匂い」と感じても、長時間嗅いでいると頭が痛くなったり、飽きてしまったりすることがあります。
天然精油(エッセンシャルオイル)の「奥深さ」
一方、無印良品のエッセンシャルオイルは、100%植物から抽出された天然成分です。
- 香りの奥行き 植物の生育環境や抽出方法によって、何十、何百もの芳香成分が複雑に混ざり合っています。そのため、香りに「深み」があり、時間が経つにつれて表情が変わります。
- リラックス空間の質が変わる ただいい匂いがするだけでなく、張り詰めた気分をほぐしたり、気持ちをシャキッと切り替えたりする、本来のアロマテラピーの良さを感じられます。
せっかく「癒やし」を求めてディフューザーを使うのですから、機械を壊すリスクを負ってまで質の劣る香りを拡散させるのは、少しもったいない選択だと言えます。
4. それでも安く楽しみたい!無印アイテムでの「代用テクニック」3選

「理屈はわかったけど、純正オイルは高いし……」 「もっと手軽に、バシャバシャと香りを使いたい!」
その気持ち、よくわかります。 そこで、無印良品のアイテムをうまく活用して、機械を壊さずにアロマウォーターのような体験をする「裏技」を3つご紹介します。
これなら安全に、かつコストを抑えて楽しむことができます。
代用策①:自分で作る「特製アロマミスト」
ディフューザーを使わず、スプレーボトルで空中に香りを広げる方法です。これなら機械の故障を気にする必要はありません。
【用意するもの】
- 無印良品 ポリエチレンスプレーボトル
- 無印良品 エッセンシャルオイル(お好みの香り)
- 無水エタノール(薬局で購入可):5ml
- 水道水:45ml
【作り方】
- ボトルに無水エタノール5mlを入れる。
- 精油を10滴ほど垂らして、よく振って溶かす。 (※油は水に溶けないため、先にアルコールに溶かすのがコツです)
- 水を45ml加え、さらによく振る。
これで、市販のアロマウォーター以上にフレッシュな香りのルームスプレーが完成です。使うたびによく振ってから、お部屋にシュッと吹きかけてください。
代用策②:「ファブリックミスト」を活用する
「作るのが面倒」という方は、無印で売っている「ファブリックミスト」が正解です。 本来は衣類用ですが、カーテンやソファ、クッションに吹きかけることで、部屋全体を香らせることができます。
私のイチオシは「ルームフレグランススプレー おやすみブレンド」です。
名前に「おやすみ」とありますが、私は寝る時以外でも、仕事中やリフレッシュしたい時など、いろんな場所で使っています。
「とりあえず部屋をいい匂いにしたい!」という時は、必ずこれを使ってしまうほど万能で素晴らしい香りですよ。
代用策③:余ったアロマウォーターは「アロマストーン」へ
「すでに他社製のアロマウォーターを買ってしまって、捨てるのがもったいない……」
そんな時の最終手段として、無印の「アロマストーン(素焼きの陶器)」に垂らして使い切る方法があります。機械を使わないので、数千円するディフューザーを壊す心配はありません。
ただし、以下の点にご注意ください。
- ストーンが目詰まりする可能性があります アロマウォーターに含まれる「界面活性剤」などの成分は蒸発しないため、ストーンの内部に残り、目詰まりを起こしやすくなります。
- シミや変色リスク 色付きの液体の場合、ストーンに色が沈着します。
- 裏技としての割り切り 「ストーン(数百円)が汚れるのは仕方ない。ディフューザー(数千円)が壊れるよりはマシ」と割り切れる場合のみ、この方法で消費してください。
※もし「アルコールと精油のみ」で作られた高品質なアロマウォーターであれば、目詰まりのリスクは低くなりますが、成分表示をよく確認しましょう。
5. 【重要】ディフューザーを長く使うためのメンテナンス術

最後に、無印のディフューザーを愛用するすべての方へ、医療職の視点から「これだけはやってほしい」というメンテナンスのポイントをお伝えします。
多くの人は「洗剤で洗う」「除菌する」まではやるのですが、その後の「乾燥」をサボっているケースが非常に多いです。
拭いただけでは不十分!「乾燥」がカビを防ぐ
「タオルで拭いたから、そのまま片付けてOK」 そう思っていませんか? 実はそれが一番危険です。
- 水分は隙間に残る タオルで拭いても、タンクの細かい溝や、振動板の周りのパッキン部分には水分が残っています。ここから雑菌が繁殖し、次に使う時に異臭の原因になります。
- 「2時間」は自然乾燥を 清掃した後は、フタやパーツをバラした状態で、必ず2時間ほどは風通しの良い場所で自然乾燥させてください。
「拭き上げ」と「乾燥」。このワンセットを徹底するだけで、不快なピンクぬめりやカビのリスクは激減します。 清潔なミストを楽しむために、ぜひ今日から実践してみてください。
まとめ:無印の機械には「水と油」だけを入れるのが正解

今回のポイントを整理します。
- 無印に「加湿器用アロマウォーター」は売っていない。 (似ているのはファブリックミストなので注意!)
- 他社製アロマウォーターはNG。 「泡」による故障と、「雑菌」による健康被害のリスクがあるため。
- 手軽に香らせたいなら「代用策」を。 「おやすみブレンド」のミストをカーテンに使ったり、スプレーを自作したりするのが、安全でコスパの良い楽しみ方。
一見、安価なアロマウォーターは魅力的に見えますが、数千円〜1万円近くするディフューザーを故障させてしまっては、結果的に高い買い物になってしまいます。
無印良品のアロマディフューザーは、メーカー推奨の「水道水」と「純正エッセンシャルオイル」を使った時に、最も美しく、安全に香るように作られています。
ぜひ、正しい使い方で、安全で心地よい香りライフを楽しんでくださいね。
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